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ダーウィンの日記1834年12月18日から21日 [ダーウィンの日記(II)]


ダーウィンの日記(チョノス諸島の南方; トレス・モンテス半島)

[日記仮訳]

(1834年12月)18日

外洋に出た。

前日の事になるが、ストークス氏[航海士かつ測量助手]が、ホゥェール・ボートに3週間分の食料を積んでこの群島[チョノス群島]の北部を測量するために派遣された。そちらで私たちと合流する。
いまや3艘のボートが私たちから離れた場所にいることになる。そういうことは10門ブリッグ[注]にとってはたいしたことではあるわけだが。ヨナは海に放り出されたというわけだ(それが誰のことかはともかく)[*注]
[注] ビーグル号のこと。砲10門を備えたブリッグ型の船と書いているのは、この場合、小さな船といういう意味合いが込められている。
[*注] ここは3艘のボートに乗っている人たちのうちで誰がヨナの役ということになるかはともかくとして、という程度の意であろう。なおヨナは旧約聖書中の人物。ダーウィンは "Jonas" と綴っているが、旧約聖書の人物ヨナは英語では Jonah で、Jonas は『ヨナ書』のこと。ヨナは神の怒りをかうことがあって乗っていた船が大しけにあった時、自らその事を申し出ることにより海に放り込まれる。その後大きな"魚"(クジラの意味で書かれているのだろうと言われている)に呑まれて助かる。


20日

ビーグル号は順調に風を得て最南端[注]まで来た。ここは来なければならない地点であった。20日の正午には私たちは "南" に別れを告げ[*注]、船を北に向けた。風は順風であった。
[注] チョノス諸島の南方にあるトレス・モンテス半島の最南端。
[*注] これまで南米地域の涯とも言えるホーン岬付近では数週間にわたる難渋を極めたり、その近くのティエラ・デル・フエゴでのいくつかの任務に従事した時日も長いビーグル号ですが、この後は、英国に帰るまで、緯度にしてここ(南緯46度58分57秒)より南の地点に下ることはありません。この先でこの緯度(南緯)に接近するのは、オーストラリア大陸の南東近くにあるタスマニアを離れて西に向かう際、1836年2月19日に南緯44度07分 東経145度14分の地点を通るときです。


トレス・モンテスの岬から長く延びる風雨にさらされたそびえ立つ海岸に沿って気持ちよく走った。ここは、丘のごつごつとした輪郭とともに、そのほとんど断崖ともなっている急峻な側面までも達する森の厚い被覆が顕著である。

日曜日 21日

停泊地を見いだした。ここはこの未知で危険な海岸においては困難に陥った船にとっておおいに有用かもしれない。ここはこれまで見たうちでももっとも完璧に錐体となっている丘によって簡単に見分けられる[注]。これはリオ・デ・ジャネイロ港入り口の有名なシュガーローフに全くまさっている。
[注] ダーウィンが言っているこの入り江、具体的場所は不確かですが、ダーウィンが言っている"完璧に錐体となっている丘"ということから、下の参考地図1に示した所として推定されます。下の画像と参考地図1参照。なお、フィッツロイ艦長はこの21日に停泊した入り江をあまり良い所とは考えておらず、参考地図2に示した入り江の方に船を移してクリスマスを迎える事になります。

[地図] 12月20日のビーグル号の位置の目安(トレス・モンテス半島南端の岬の沖)..

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[画像] 錐山(Monte Cono; 21日付け記事中で言及されている丘)..
17905355.jpg
画像出典:http://www.panoramio.com/photo/17905355

[参考地図1(推定)] "錐の入り江(Cone Creek)"(21日朝から22日までの停泊地で位置は推定)..

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[参考地図2(フィッツロイ艦長の記した数値をそのまま使用してますが、航海のこの段階ではあまり精度が高いものではないかもしれません)] "クリスマス入り江"(先取りですが23日から27日までの停泊地; 上の参考地図1にある"錐の入り江"( Cone Creek;位置は推定)があまり条件が良くないのでクリスマスのための停泊地をこちらに移すことになります)..

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[天候]1834年12月20日正午の天候:
南西の風、風力4、青空、雲、気温摂氏10.6度、水温摂氏11.9度。

[日記原文]
18th
Stood out to sea. — Mr Stokes, the day before, was despatched in a Whale-boat with three weeks provisions to survey the Northern part of the Archipelago & there meet us. — We have now three boats away; which is something for a ten gun-brig to say. — The Jonas is out of the Ship (whoever he may be);

20th
the Beagle had a fair wind to the extreme Southern point where it was necessary to proceed; & when at Noon on the 20th, we bid farewell to the South & put the Ships head to the North, the wind continued fair. — From C. Tres Montes we ran pleasantly along this lofty weather-beaten coast. It is remarkable by the bold outline of the hills & the thick covering, even on the almost precipitous sides of [the] forest. —

Sunday 21st
Found an harbor, which on this unknown & dangerous coast might be of great utility to a distressed vessel. It can be easily recognized by the most perfectly conical hill I ever saw; it quite beats the famous Sugar-loaf at the entrance of Rio de Janeiro harbor.

cdarwin_s.jpg

["ダーウィンの日記(II)"について]
ここで扱っているのはダーウィンがビーグル号で航海に出ている時期の日記です。訳文は私的な研究目的に供するだけの仮のものです。普通は全文を訳します。また、ダーウィンが日記を書いた当時の世界観を出来るだけそのままにして読む事を念頭に置きますので、若干の用語の注釈を除いては、現代的観点からの注釈は控え気味にしてあります。
[日記原典] Charles Darwin's Beagle Diary ed. by R.D.Keynes, Cambridge U.P., 1988.

ダーウィンの日記の1831年10月24日から1832年9月14日までの分はアーカイヴ的に"ダーウィンの日記(I)"として何日分かずつまとめて次のところにあります..
http://saltyfumi.blog.so-net.ne.jp/ (トップページ;すなわち1832年9月14日分)
http://saltyfumi.blog.so-net.ne.jp/1831--12-16_0 (日記の冒頭部;前書き)

バナーの画像はビーグル号の人たちの1835年の測量で作成されたガラパゴス諸島の海図の一部


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コメント 4

アマデウス

"Conical Hill" との描写から良く”Monte Cono"を見つけられましたね。
まず間違いありませんね。。。さすがです!
by アマデウス (2009-04-03 07:02) 

さとふみ

場所の特定が正確であることを望みます。
by さとふみ (2009-04-03 14:38) 

にこちゃん

いつも思うのですが、昔の船では今でいう簡単な計器しかついてない
と思うのですが、よくこんな地形の海岸で、
あっちだこっちだと進んでいけたなぁと、感心しきりです。

by にこちゃん (2009-04-03 19:01) 

さとふみ

確かに、驚嘆すべきことですね。
by さとふみ (2009-04-04 05:03) 

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