ダーウィンの日記1834年11月27日と28日 [ダーウィンの日記(II)]
キンチャオ島北西部からチロエ島を見る
ダーウィンの日記(チロエ; 東岸沿いにボートで南下; キンチャオ島)
[日記仮訳]
(1834年11月)27日と28日
幸運にもこの2日間は好天で、夜までにはキンチャオの島に到着した。この近傍は耕作の中心地であり、島々の多くはほとんど刈り払われているし、切り開かれた広い帯が主島の海岸沿いにはある。
私はここのチロエの人々の富について知りたいと思った。ダグラス氏[注]が言うには誰も定常収入を持っているとは考えられないとのことである。各人はその家族の消費に足るものを育て、ハムとかジャガイモ等をもう少々作り、それらを粗末な田舎のボートでサン・カルロス[*注]に送る。これらはそこで彼等が自分では作れない衣服等の品物や若干の贅沢品と交換されるのである。
[注] チロエに長く住んでいる測量士で、今回のボート行にパイロットとして雇われた。前日26日付の日記に既出。
[*注] 何度も出ているが現在のアンクドのこと。
最も裕福な土地所有者のひとりは、長い勤勉な生活の後には、1千ポンド・スターリングにのぼる富を蓄積する事が可能かもしれない。そうである場合、それは何らかの秘密の場所にひっそりと隠されるのである。各家族は、一般に、地面に埋められた隠された壷や収納箱を所有しているのである。
[地図] キンチャオ島..
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[画像] キンチャオ島西部からチロエ島..
出典:http://www.panoramio.com/photo/12246758
[日記原文]
27th, 28th
We had the good luck to have these two days fine, & reached by night the Isd of Quinchao. This neighbourhead[sic] is the centre of cultivation; many of the islands are nearly cleared & a broad strip of cleared ground follows the coast of the main Island.
I was curious to know the wealth of the Chilotans. — Mr Douglas tells me that no one can be considered to possess a regular income. Each person raises enough for the consumption of his own family & a little more such as hams & potatoes, which are sent in the rude country boats to S. Carlos, where they are exchanged for such articles of clothing as they can not themselves manufacture, & a few other luxuries. — One of the richest landowners, in a long industrious life, might possibly accumulate as much as a thousand pounds sterling; should this happen it would be stowed away in some secret place, for each family generally possesses a hidden jar or chest buried in the ground. —
["ダーウィンの日記(II)"について]
ここで扱っているのはダーウィンがビーグル号で航海に出ている時期の日記の1832年9月15日以降の記事です。訳文は私的な研究目的に供するだけの仮のものです。普通は全文を訳します。
[日記原典] Charles Darwin's Beagle Diary ed. by R.D.Keynes, Cambridge U.P., 1988.
ダーウィンの日記の1831年10月24日から1832年9月14日までの分はアーカイヴ的に"ダーウィンの日記(I)"として次のところにおいてあります..
http://saltyfumi.blog.so-net.ne.jp/ (トップページ;すなわち1832年9月14日分)
http://saltyfumi.blog.so-net.ne.jp/1831--12-16_0 (冒頭部;前書き)
冒頭画像の出典:http://www.panoramio.com/photo/1800048
ダーウィン生誕200年の年にダーウィンの日記を読ませて
頂けるとは嬉しいです。ガラパゴス諸島にあるダーウィン
研究所を訪問したことがあります。
by アマデウス (2009-03-27 21:46)
アマデウスさん
読んで頂けると励みになります。ここでのダーウィンの日記においてガラパゴスの記事に到着するのは今年の9月頃になるかもしれません。それまでに、バルディビアでの大地震遭遇、アンデス横断、アタカマ砂漠南方の乾燥地帯縦断、等々の話題があります。
by さとふみ (2009-03-28 06:26)
>地面に埋められた隠された壷や収納箱
とありますが、一体、治安状態はどうだったのでしょうか?
by zenjimaru (2009-04-06 17:42)
治安のこともあるとして、ここの場合は銀行制度がおそらくまだ発達していなくて、富の蓄積をするには(再投資されない部分は)地下にでも保管する他なかったのではないでしょうか。
by さとふみ (2009-04-06 18:27)