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ダーウィンの日記1833年12月28日 [ダーウィンの日記(II)]

ダーウィンの日記(パタゴニア; ポート・デザイア)

[日記仮訳]

(1833年12月)28日

ヨール艇[注]が、チャッファーズ氏[航海長]の指揮の下に、3日分の食糧を積んで、この入江の源頭部を測量するために派遣された。
[注] ビーグル号に載せてあるボートのひとつ。

午前中に、スペイン人の描いた古地図にある水場を探した。ある入江の奥に塩を含んだ水の流れる小川があるのを見つけた。潮を待つためにここで何時間か待機しなければならなかった。その間、私は内陸へ何マイルも歩いて入ってみた。平原は砂っぽい白亜質[注]で出来ていて砂利を含んでいるが、これは広くそのようになっている。その素材の柔らかさによりそれは崩壊し、数多くの谷が切り込んでいる[*注]
[注] 後に書かれた『ビーグル号航海記』(1845年) の記述では、「白亜質と外観は似ているが本質は大へん異なった土壌も混じっていた」となっています。(岩波文庫版、上、p.253 参照)
[*注] 例えば画像1参照。


樹木はなく、丘とも言える所の上に立って仲間のために注意深い歩哨となっているグアナコを例外として、動物あるいは鳥はほとんどいない。すべては静止と荒涼である。どれだけの世紀にわたってこのようだったのか、いかなる長いことこのままであるのか、このようなことについて思いをめぐらす。 だが、ひとつも快活なもののないこの情景において、愉快な喜びがある。それを私は説明することも理解することも出来ない[注]
[注] ダーウィンはパタゴニアでこのように一種の内的体験とも言うべき強い印象を受けたようで、これについて後にたびたび言及しています。例えば『ビーグル号航海記』(1845年)や、晩年になって家族向けに書かれた『自伝』などでもこの印象について記しています。特に後者では、"パタゴニアの大砂漠と、密林におおわれたティエラ・デル・フエゴの山々が、私の中に呼び起こした崇高な感情もまた、私の心に消しがたい印象を残している"(『ダーウィン自伝』八杉龍一・江上生子訳、筑摩書房、p.93) としています。

夕方、私たちは若干のマイルの距離を帆走でさかのぼって[注]、夜テントを張った。
[注] 例えば画像2参照。

[画像1 (拡大出来ます)] ポート・デザイア近くの峡谷..
glen0.jpg
Conrad Martens。1833年12月28日。

[画像2 (拡大出来ます)] 帆走するボート..
sailing 03.jpg
Conrad Martens。1833年12月末。

[地図]ポート・デザイア[プエルト・デセアド]付近..

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[天候]1833年12月28日正午の天候(ビーグル号上):
西の風、風力4、全天曇り、暗い、水温華氏53度(摂氏11.7度)。


[日記原文]
28th
The Yawl, under the command of Mr Chaffers with three days provisions, was sent to survey the head of the creek. — In the morning we searched for some watering places mentioned in an old Chart of the Spaniards. — We found one creek, at the head of which there was a small rill of brackish water. — Here the tide compelled us to stay some hours. — I, in the interval, walked several miles into the interior. The plain, as is universally the case, is formed of sandy chalk, & gravel; from the softness of these materials it is worn & cut up by very many vallies. — There is not a tree, &, excepting the Guanaco, who stands on some hill top a watchful sentinel over his herd, scarcely an animal or a bird. — All is stillness & desolation. One reflects how many centuries it has thus been & how many more it will thus remain. — Yet in this scence without one bright object, there is a high pleasure, which I can neither explain or comprehend. — In the evening, we sailed a few miles further & then pitched the tents for the night. —

cdarwin_s.jpg

["ダーウィンの日記(II)"について]
ここで扱っているのはダーウィンがビーグル号で航海に出ている時期の日記の1832年9月15日以降の記事です。訳文は私的な研究目的に供するだけの仮のものです。普通は全文を訳します。
[日記原典] Charles Darwin's Beagle Diary ed. by R.D.Keynes, Cambridge U.P., 1988.

ダーウィンの日記の1831年10月24日から1832年9月14日までの分はアーカイヴ的に"ダーウィンの日記(I)"として次のところにおいてあります..
http://saltyfumi.blog.so-net.ne.jp/ (トップページ;すなわち1832年9月14日分)
http://saltyfumi.blog.so-net.ne.jp/1831--12-16_0 (冒頭部;前書き)

タグ:パタゴニア
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