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ダーウィンの日記1833年12月29日 [ダーウィンの日記(II)]

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ダーウィンの日記(パタゴニア; ポート・デザイア)

[日記仮訳]

(1833年12月)29日

この日のなかばまでにヨール[注]は水の浅さと数多くの泥の堆のためにこれ以上遡れなくなった。隊のひとりがたまたま水を口に含んでみると水はまったくの塩水であることがわかった。夕食のすぐあと、チャッファーズ氏[*注]が小舟で出発し2、3マイル進んだ所で小さな真水の川を見つけた。それは小さいのではあるが、私には多分それはコルディジェラ[アンデス山脈]から流れているように思える。水は洪水時であるかのように泥水となっている。今はコロラド河やサウセ河など[†注]の雪解け水の時期である。
[注]ビーグル号に載せている艇でこのときは入江の測量に出ている。
[*注] ビーグル号の航海長で、今回のヨールによる測量隊の責任者。
[†注] ここでのコロラド河はパタゴニアの北端を画するとされる河で、サウセ河はそれより北方のバイア・ブランカ近くを流れる河。


チャッファーズ氏が小さな谷間で足が不自由で背中に鞍の跡のあるウマを見た。そういうことならインディアン[先住民]たちがそれを放置して去ったか、あるいはこの近くにいたに違いない。

ここの眺望はとても立派で荒々しい。まさに流路に沿って、赤い斑岩が水面から垂直に立ったり尖塔や頂点を形成している[注]。こういうこと以外ではこの地帯は同じ様相だ。
[注] 下のコンラッド・マーテンスの素描はこの付近の様子を描写したものなのでしょう。

夜、小さな川の自分たちの発見にみんなですっかり喜んでいたわけだが、だが、アザラシ猟の者が何年か前そこを遡ったと言っていたわけだからそれは発見というわけではなかったのである。

[画像 (拡大出来ます)] ポート・デザイアの入り江の奥..
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Conrad Martens。1833年12月29日。

[地図] ポート・デザイア (印は真水の川の発見箇所としてある地点の緯度・経度を現行の地図上の位置として示したもの)..

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[天候]1833年12月29日正午の天候(ビーグル号上):
東北東の風、風力5、青空、雲、気温華氏57度(摂氏13.9度)、水温華氏53.5度(摂氏11.9度)。

[日記原文]
29th
By the middle of the day the Yawl could not get any higher, from the shoalness of the water & the number of mud-banks. — One of the party happening to taste the water found it only brackish. — Mr Chaffers, directly after dinner started in the dingy, & after proceeding two or three miles found himself in a small fresh water river. — Small as it is, it appears to me probable, that it flows from the Cordilleras, the water is muddy as if flooded, & this is the time of year for the snow freshes of the Colorado, Sauce &c. —
Mr Chaffers saw in a little valley a lame horse, with his back marked by the saddle; so that the Indians must have left him there or were then in the neighbourhead. The views here were very fine & rude; the red porphyry rock rises from the water in perpendicular cliffs, or forms spires & pinacles in its very course. — Excepting in this respect the country is the same. — At night we were all well pleased at our discovery of the little river; which, however, was no discovery as a Sealer had said some years ago that he went had been up it. —

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["ダーウィンの日記(II)"について]
ここで扱っているのはダーウィンがビーグル号で航海に出ている時期の日記の1832年9月15日以降の記事です。訳文は私的な研究目的に供するだけの仮のものです。普通は全文を訳します。
[日記原典] Charles Darwin's Beagle Diary ed. by R.D.Keynes, Cambridge U.P., 1988.

ダーウィンの日記の1831年10月24日から1832年9月14日までの分はアーカイヴ的に"ダーウィンの日記(I)"として次のところにおいてあります..
http://saltyfumi.blog.so-net.ne.jp/ (トップページ;すなわち1832年9月14日分)
http://saltyfumi.blog.so-net.ne.jp/1831--12-16_0 (冒頭部;前書き)

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