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ダーウィンの日記1834年12月2日から5日 [ダーウィンの日記(II)]

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レムイ島とトランキ島の間のチロエ本島の海岸の一画; 大陸の山脈(コルディジェラ)の一部が見える

ダーウィンの日記(チロエ; 東岸沿いにボートで南下)

[日記仮訳]

(1834年12月)2日

この日は穏やかで、わずかにレムイ島[注]の南端に至っただけであった。
[注] 下の画像1参照。

3日

前に来た時にはチロエでこのような日を楽しめるとは夢にも思わなかった。 コルディジェラ[アンデス][注]の雪を頂いた錐体たちが内陸側の鏡のような海面の上に見え、その海面では所々ネズミイルカやフナガモがさざ波を起こすだけという、これより美しい情景を想像することは出来ない。そして私はこの眺望を甘くにおう常緑樹で飾られた崖から賛嘆したのであるが、そこの明るい色、滑らかな幹、寄生植物、シダ、樹木状の草本植物、といったものがありこれらすべては私に熱帯を思い出させた。そして気温によって私が現実に引き戻されることはなかったのである。
[注] ページ冒頭の画像参照。

4日

天候はスコール含みであったが、私たちはP.チャグアに到着した。この土地の一般的な地物はまったく同じようで、まばらにしか居住されていない。タンキ[注]の大きな島全体はほとんど刈り払われた所がなく、どの側面にある木々もすべてその枝を海面に広げている。
[注] 原文は "Tanqui" だが、"Tranqui" が正しいと思われる。下の地図および画像1参照。

5日

今日、柔らかい左岸の崖の上にパンギ[注]が生育しているのに気がついた。それはダイオウにいくらか似ていて、それを巨大にしたようなものだ。住民はその茎を食用にするが、それは弱酸性である。その根では、皮革をなめし、黒い染料をとる。葉は縁がかなり切れ込んでいて、しかもほとんど円形である。そのひとつの直径はほぼ8フィート[2.4m]であった(周囲24フィートになる!)。 茎は1ヤードよりだいぶ高い。おのおのが4~6枚のこの巨大な葉を広げているので、その群はとても立派な外観を持っている。
[注] 1845年出版の『ビーグル号航海記』では対応するものをパンケ(Panke; "panque")としていて、ダーウィンはそこでGunnera scabraという名を記している。グンネラつまりGunnera tinctoria の別名とされる。下の画像2(『ビーグル号航海記』1890年版の挿絵)参照。

[地図] トランキ島(ダーウィンはタンキ[Tanqui]島と書いている)とチロエ島東部および南米大陸西岸..

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[画像1] チロエ島東部の衛星写真 レムイ島とトランキ島..
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[画像2] 『ビーグル号航海記』(1890年版)にあるグンネラの挿絵(後の人の描いたもの)..
gunnera.jpg

[日記原文]
2nd
The day was calm & we only reached the South extreme of Lemuy.

3rd
During our last visit, I fancied Chiloe never enjoyed such a day as this; I cannot imagine a more beautiful scene, than the snowy cones of the Cordilleras seen over an inland sea of glass, only here & there rippled by a Porpoise or logger-headed Duck. And I admired this view from a cliff adorned with sweet-smelling evergreens, where the bright colored, smooth trunks, the parasitical plants, the ferns, the arborescent grasses, all reminded me of the Tropics, neither did the temperature recall me to the reality. —

4th
The weather was squally, but we reached P. Chagua: the general features of the country remain precisely the same: it is much less thickly inhabited: the whole of the large island of Tanqui[sic] has scarcely one cleared spot; the trees on every side extend their branches over the sea. —

5th
I noticed to day growing on the cliffs of soft sandstone some very fine plants of the Pangi, which somewhat resembles the Rhubarb on a gigantic scale. — The inhabitants eat the stalks, which are sub-acid, & with the root tan leather & prepare a black dye. [Note in margin: The stalks are called Nalca, so indeed is the plant sometimes.] The leaf is much indented in its margin & is nearly circular; the diameter of one was nearly 8 feet (giving a circumference of 24 feet!). The stalk rather more than a yard high: each plant throws out from four to six of these enormous leaves & a group of them hence has a very fine appearance. —

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["ダーウィンの日記(II)"について]
ここで扱っているのはダーウィンがビーグル号で航海に出ている時期の日記です。訳文は私的な研究目的に供するだけの仮のものです。普通は全文を訳します。また、ダーウィンが日記を書いた当時の世界観を出来るだけそのままにして読む事を念頭に置きますので、若干の用語の注釈を除いては、現代的観点からの注釈は控え気味にしてあります。
[日記原典] Charles Darwin's Beagle Diary ed. by R.D.Keynes, Cambridge U.P., 1988.

ダーウィンの日記の1831年10月24日から1832年9月14日までの分はアーカイヴ的に"ダーウィンの日記(I)"として何日分かずつまとめて次のところにあります..
http://saltyfumi.blog.so-net.ne.jp/ (トップページ;すなわち1832年9月14日分)
http://saltyfumi.blog.so-net.ne.jp/1831--12-16_0 (日記の冒頭部;前書き)

冒頭画像の出典:http://www.panoramio.com/photo/3748405





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コメント 4

Cecilia

ネズミイルカにフナガモ・・・どんなのでしょうか。
私で4001niceですが、コメント入れる前に4000niceだなあ・・・と思って見ていました。(おめでとうございます!)
by Cecilia (2009-03-30 08:38) 

さとふみ

Ceciliaさん..
コメントありがとうございます。

フナガモについては以下のページに画像が..
http://fumisalt.blog.so-net.ne.jp/1832-12-26

ネズミイルカについては次のページに映像があります..
http://saltyfumi.blog.so-net.ne.jp/1832-07-14
by さとふみ (2009-03-30 08:57) 

アヨアン・イゴカー

>パンギ
これは現物を見たら、感動するでしょうね。なんと大きな葉っぱでしょう!
フナガモのブログ、見直しましたが、本当にお尻に水車が付いているようで、愉快な鳥ですね。
by アヨアン・イゴカー (2009-04-01 01:20) 

さとふみ

葉の直径が2.4mというのはかなりのものですね。
by さとふみ (2009-04-01 05:50) 

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